札幌劇場ジャーナル

【STJ第2号掲載】ふきのとうホール特集 (2)

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さっぽろ劇場ジャーナル第2号(2018年10月発行)で多くの反響があった「ふきのとうホール特集」。紙面に掲載した特集を4回に分けてWebでも公開しています。第1回目の記事はこちらからどうぞ。第2回目の今回はふきのとうホールを運営する六花亭 文化部 日浦智子さんへのインタビューです。(事務局)


六花亭は、クラシック音楽、図書施設、美術館など、多岐にわたる文化事業を行っている。六花亭は文化事業についてどのような考えを持っているのか。文化部の日浦さんに伺いました。

日浦 まず私たちは「文化事業」とは呼ばずに「文化活動」と言っているんですよ。

多田 事業ではないと。

六花亭 文化部 日浦智子さん

日浦 六花亭は「お菓子屋さん」なので、事業化して本業を逸脱したくないと思っています。あくまでもお菓子を買ってくださるお客様とのコミュニケーションの一環という考えです。最初の文化活動は、昭和35年から始めた『サイロ』という児童詩誌ですね。今年で700号まで到達しました。創業者である小田豊四郎が、福島の柏屋さんという和菓子屋が出している『青い窓』という子どもの詩を集めた冊子を読んで大変感動したことが『サイロ』を始めたきっかけです。「十勝の子どもの詩心を育む活動をしたい」との思いからです。その時に弊社が表紙の絵を依頼した画家が、いま六花亭の花の絵を書いていらっしゃる坂本直行さんでした。それから坂本さんが包装紙や紙袋のデザインを手がけてくださるようになりました。坂本直行さんとの関係は包装紙よりも『サイロ』が先だったんです。

多田 今いろいろな分野に広がったというのはどのような経緯があったのですか。

日浦 昭和初期の北海道には娯楽はまだまだ少なかったと思います。そういう時代にお客様に豊かな生活を提供したいと思ったのが始まりです。ふきのとうホールでも寄席を開催しています。柳家一門にかれこれ40年近くお世話になっておりまして、いまや人間国宝になられた柳家小三治師匠が若手の頃からです。寄席を始めたのとほぼ同時期に、帯広の店舗で「デセールコンサート」というサロンコンサートも始めました。喫茶室でデザートを食べながらクラシック音楽を聴くんです。当初は六花亭がやらなければ帯広で本格的なコンサートはめったに聴けないし、落語も見ることができなかったので、そういう使命というのはあったと思いますね。

中札内美術村(六花亭提供)

文化活動をさらに広げたのは、二代目の小田豊になります。平成4年には中札内村に坂本直行記念館を建てました。今は「中札内美術村」になり、広大な敷地に美術館が点在しています。そこで「ひろびろ音楽祭」という野外音楽祭を開いていたこともあります。札幌で定期的なコンサートを開催するようになったのは、2002年に「真駒内六花亭ホール店」というコンサートホールと店舗を併用した建築物を建ててからです。ただ「街のおやつ屋さん」ですからね。コンサートではケーキと紅茶、寄席では和菓子とほうじ茶をお出ししています。お菓子とセットで楽しんでいただきたいですね。

多田 やはり食が中心で、それにプラスアルファがあるとより豊かになるという発想は外したくないということなのですね。文化部での日浦さんの役割とはどのようなものでしょうか?

六花文庫(六花亭提供)

日浦 ふきのとうホール、ギャラリー、六花文庫やそこで開催するアートの公募展など、札幌地区の文化活動を担当しています。

多田 六花文庫でも食に関する啓蒙活動に力をいれていらっしゃるとか。

日浦 お菓子を中心として、食べ物、食の歴史、食生活、食文化、というものを皆さんに深めてもらいたいと思っています。弊社の商品は保存料を一切使っていません。だから賞味期限も短い。とても自然なことなのですけれど、ここ何年か「それは不便だ」という風潮もあり、皆さんにもう少し賢い生活者になっていただきたいという会社の思いは強くあります。たとえば桜餅。あれは大昔から桜の葉で包んで、その香りが移るから桜餅なのですけれども、簡単に着色できるようになってからはピンク色の桜餅が主流です。でもそこに警鐘を鳴らしたくて、弊社は桜色の桜餅と白い桜餅とを両方発売しました。桜色のほうが俄然売れますから、白い方は作らないほうが売上は良いのですけれど、それでもあえて皆さんに「少し考えてみませんか」と。そして、ただ売り場に出すだけでは伝わらないので、製造者の気持ちを書いた「白い桜餅」という文章を忍ばせたりして。

多田 そういうゲリラ戦も結構やっているんですね。それは面白い。

日浦 他にも弊社はマーガリンを使わない。バターなんです。マーガリンは最近できた食べ物であって、それを食べ続けたことによって人体にどう影響がでるのか十分検証されないまま、固くなくて便利だという理由で食卓に広まりました。でもバターは何千年も歴史がある。それほど続いているということは、それだけ正しいということの証明といいますか。歴史が証明する正しさのようなものを二代目の小田豊がクラシック音楽に感じて、舞台芸術にも力を入れたのではないかと思います。いろいろ足さず、シンプルに。

多田 ホールに来るお客さんの中で、日浦さんに会いに来ているような方をよく見かけますね。

日浦 それはすごく嬉しいです。一般的なコンサートホールに通い慣れている方からすると、ここはいろいろな意味で異質だと思います。アットホームさというか。弊社の場合はコンサートのチケットも店舗で売っています。人と人とのつながりを大切にしたい。街の菓子屋として、毎日のおやつ屋さんとして、みなさんとのストーリーを大事にしたい。それはお菓子の販売でも文化活動でも弊社が一番大切にしていることのひとつです。

(2018年10月1日 六花亭札幌本店にて)

札幌本店 裏庭に六花の花壇

六花亭札幌本店


シリーズ第3回目はふきのとうホールのアシスタントミュージックディレクターである櫻井さんのインタビュー(前半)をお届けします。ホールの音響や主催公演についてのお話です。引き続きどうぞお楽しみください。(事務局)

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